日本語空間

2021年3月13日

籠の鳥? 飛翔する翼?

 先週末から、親知らずが痛み出し、そのうちにと

思いつつ、歯医者に行くのを先延ばしにしていた

ところ、頭痛まで引き起こされてしまいました。

 もしや腐っている? と想像しましたが、単なる

炎症で、消毒と投薬でようすを見ることになったの

ですが…

 鎮痛剤を飲むと、強い眠気におそわれるため、仕事

の時は飲まずに我慢をして、他の時間は、うつらうつら
 
過ごしていました。

 そのような状況で、漠然と頭に浮かんだのが、先日

書いた女性と芸術の関係です。実際、フェミニズムと

アートが交差する地点に立脚した表現は、枚挙にいとま

がありません。

 学生時代、選択授業で「現代思想」のクラスに参加を

したことがあります。学生たちは、個性豊かで、先生も、
 
自由な発言を歓迎してくれたのが印象的でした。

 ある時、先生が何かを言ったあとに、一人の学生(女子)

が、「それってアブラモヴィッチみたいな感じですか?」

と聞きました。あまり唐突だったので、先生はキョトンと

していましたが、私は、「マリーナ・アブラモヴィッチの

ことかな?」と思いました。

 彼女は、(アブラモヴィッチが)「太い蛇をぐるぐる巻き
 
つけて」パフォーマンスする、とひとりで興奮気味に説明し
 
ていました。

あくまでも真剣に発言しているのに、他の学生は、完全には

ついていけておらず、ふしぎな時間が流れていたのを、今も

おぼえています。

 実際に、マリーナ・アブラモヴィッチは、生々しく緊迫感
 
のある表現をおこなうセルビア出身のアーティストです。自己
 
の肉体に苦痛を与えるパフォーマンスは、それが何かを象徴
 
しているのであっても、かなり直接的で生(なま)な方法を
 
採っています。
 

 
 暴力的な表現をも辞さないという意味では、共通していな
 
がら、より抽象化を経たミニマリズムのアーティストに、

ドイツ出身のレベッカ・ホーンがいます。

 彼女の制作した映画「ダンス・パートナー」に登場する作品

「柔らかい囚われ人」(羽根で覆われる機械)は、象徴性に富む

一方で、軽やかな想像の余地を残しています。

 対照的な二人の現代美術家ですが、いずれにせよ、伝統的な

分野の創作ではないからこそ、「女性」性は、枷ではなく飛翔
 
のための翼になっていると見受けられるのです。
 

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