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「刺さる」ことば

猛暑の候という挨拶は、8月上旬までとされるが、

温暖化の昨今、季節感にも異変が生じているようだ。

8月も下旬にさしかかるというのに、炎暑の候とでも

いいたいような日々が続く。


しかし、台風によるぐずついた数日が過ぎ、カラッと

晴れ渡った夏空を眺めていると、渾身の力を振り絞る

ように鳴いている蝉の声が聞こえ、ハッとさせられた。


さて、日本人が会話をしていて、主語抜きで「刺さる」、

「刺さった」という時、「何」が「どこ」に刺さるのか?

と思った外国人の方はいるかもしれない。


それは、「ことば」が「胸」に刺さったのである。


換言すれば、そのことばは非常に感動的、または

軽いショックを伴うようなもので、聞き流せなかった

のだ。


しかし、「刺さる」は流行語で俗語的でもあるので

論文には当てはまらないかといえば、それに該当する

ものはある。

すなわち高い意識で磨かれた文章表現は、「知」的

インパクトを発揮し、読む者を捉えるだろう。

そして、文章表現を磨くとは、単に文章をたくさん

書いて精進することではなく、それに先立ち多種多量

の読書が必要だ。


「知」の森の中で、胸に刺さる古今東西のことばに、

束の間陶酔したとしても、覚醒したのちは、より自由

な思惟の世界に踏み出していけるだろう。

『白薔薇』のゾフィー・ショル(1921-43)

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