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「多頭飼崩壊(たとうがいほうかい)」!?

国語辞書を編纂(へんさん)する過程に「用例採集」という 作業があります。 伝統的な定着したことばでなく、新語、俗語、元の意味から 転化したことば等を、あたかも昆虫を採集するごとく、取って きて吟味、最終的に辞書に載せるかどうかを検討するための 営みです。 公的な場では、基本的に用いるべきことばではなくとも、 口語があって文語があり、俗語があってフォーマルな語や雅語 が存在するので、私自身、どのような語にも関心を持っています。 最近、街中で「多頭飼崩壊(たとうがいほうかい)」という ことばを目にし、関心をひかれました。 「多頭飼い」は、正式には「多頭飼育(たとうしいく)」で、 前者はより口語的。 動物、主として犬や猫を何匹も飼っている状態です。 「崩壊」は、動物の数に対し場所が狭すぎたり、その他の劣悪な 環境で、飼育が不可能になったりしていること。 猫の里親探しの張り紙で、当該の猫を紹介する文章に「多頭飼崩壊 の現場から救出」とありました。 何とも切迫感が… 「不要不急」の外出自粛が呼びかけられ、在宅時間が増えたこと により、ペットを飼う人が急増しましたが、人間にとっては「癒し」 でも、動物にとっては闇が存在するようです。 また、少し前から、雑誌の記事や会話で「地頭力(じあたまりょく)」 ということばを見聞きします。 これは、やはり地頭+力という複合名詞。 一聴して、伝統的な使い方でないとわかりますが、同時に、漢字の意味 から何となく想像がつく。 学校などで詰め込んだ知識でなく、その人が元来持っている思考能力 やコミュニケーション能力を指す語のようです。 「地頭力を鍛える」という風に使います。 漢語は、名詞をつらねることで、相当長くなっても、新奇な使い方で あっても、いつのまにかすんなり定着してしまう。 その造語力には感服します。

ロージ・ブライドッティ 『ポストヒューマン 新しい人文学に向けて』より

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