- 日本語空間
「水」でつながる
野良猫がやってきたりしなければ、居心地のよい場所
から、わざわざ引越しなどしなかった。
新しい事務所は、ペット可の物件が少ないことと経済
的な理由から、少々古く日当たりもよくない。
けれども、小さな庭がついているので、野外が恋しい
子猫を遊ばせてあげられる。
ここでは、朝から夕まで汽笛の音が聞こえる。
それで、室内にいながら、海の姿を思い描く。
日々の雑務に追われ、時間を過ごすことには、嫌気
(いやけ)もさす。
そんなときには、心を空(から)にして、水でつな
がった彼(か)の地に想いを馳せる。
自由とは何か?
の問いに答えきれないまま…
だが「水は絶え間なく流れ、激流にもなる」。
今は、束の間の試練の時と信じて!
光は
復(また)
香る
港に――
射すだろう、きっと。
