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「無極(むきょく)」ーZ世代的哲学ー
「恐ろしいですね…」
昨日おこなわれた将棋のタイトル戦で、 開幕4連勝を決め、最年少5冠と
なった藤井総太(ふじいそうた)氏の異次元の強さに対し、 インターネット
中継の解説を務めた深浦康市九段は、そういって声を震わせたという。
賞賛の声が止まないなか、対照的に、藤井氏自身は「5冠は、自分の実力から
すると出来過ぎの結果です。今後それに見合うような実力をつけていきたい」
と、どこまでも謙虚な姿勢を示している。
対局中は、和服を着用しているせいか落ち着いて見えるものの、藤井氏は 弱冠19歳のまさにZ世代だ。
少し前から、授業のなかで、マーケティングに関するトピックを扱っており
(経営学専攻の学習者向けに)、そこでのZ世代に対する分析が興味深かった。
多分野での活躍が目立つ彼らには、他人は他人「自分は自分」という淡々と
しつつも揺るぎないマイペースぶりが顕著であるらしい。
たとえば、上の世代であればゲームを娯楽の一種としたのを、Z世代は、それを
ゲームの世界にとどまらせず、精神的な鍛錬に応用する才覚に恵まれている。
いわば、そこに意義ある何かを認め、攻略して終わるのでなく、終わりを設定
せず自在に進んでいこうとする頼もしさがうかがえる。
換言すれば、試合に勝つことや賞を取ることが最終目的ではなく、自身が納得
することにどこまでもこだわっているのだ。
このような姿勢は、昨日取り上げたスノーボード選手の平野歩夢氏や、大リーガー
の大谷翔平氏などにも共通している。
藤井氏は、インタビューで「無極」ということばが好きだと語った。
若き天才は、極まることのない前人未到の境地に向け、あゆみ続けるのだろう。
