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犬王(いぬおう)
9月9日、ベネチア映画祭でワールドプレミアとして上映された
「犬王(いぬおう)」が、上映後に熱い拍手を浴びたという。
犬王とは、14~15世紀に実在した人物で、近江(おうみ)における
猿楽(さるがく)のスターであった。
一方、大和猿楽(やまとさるがく)の観阿弥(かんあみ)・世阿弥(ぜあみ)
父子は、足利義満(あしかがよしみつ)の庇護を受け、能を大成する。
世阿弥は、中世の乱舞を基とするリズムを刻む身体を、あくまでも
重んじつつ、犬王の得意とした天女舞(てんにょまい)を取り入れ、
その優雅な動きを「舞の本曲」とした。
映画「犬王」の主人公は、舞踏、音楽それぞれの道を歩む若者・
犬王と友魚(ともな)。
戦乱の世にあり、みずからを信じ、運命を切り拓こうとする姿は、
状況は異なれ、混沌とした今日に、示唆を与えてくれるかもしれない。