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ことばの多義性

あることばが、文脈により異なる意味になるのは、

どの国の言語にもありえることだろう。


最近、興味深く感じたのは、「カルチャー」という

ことばの用い方だ。

ここでの場合、頭高でなく平板型で発音される。


カルチャーは、直訳すれば文化だが、組み合わされる

ことばや文脈により、ニュアンスが変わってくる。

今回は、ファッションにおけるカルチャーの見慣れない

使い方に、ハッとさせられたのだった。


もうだいぶ前から、日本では主として若者を中心に

古着が流行している。

渋谷や下北沢にとどまらず、今や地方にも、古着の

名店が多数あるようだ。


インタビューで、古着を好きな理由を聞くと、多くの

人が「他人とかぶらないから」と答えるのも、何だか

微笑ましい。


大量生産のファストブランドに人気が集まる一方で、

対照的なあり方とも思えるが、大切なのはオリジナリティ

を追求することなので、コラージュ的発想により、

時には古着とファストブランドを組み合わせることにも

抵抗はなさそうである。


また、比較的安価な古着を、高価なデザイナーズブランド

の服と組み合わせることも定着してきている。


中でも、少し前のヨーロッパ系デザイナーズブランド

の古着が、おしゃれ上級者(?)の間で人気のようだ。

それらの服は、創造性が高いため、「アーカイブ」など

と呼ばれる。


前置きが長くなりすぎたが、渋谷にあるデザイナーズ

ブランドの古着を扱う店のスタッフが、自身の服に

対する情熱を語る動画を偶然目にした。


「〝デザイナーズ〟といわれるモードに着こなす服は、

その服にない別の要素(たとえばミリタリー)を入れ、

そのカルチャーを消しているので、モードっぽく着れる」。

「モードには服のカルチャーを消すのがいちばん大事」。


カルチャーは、本来、肯定的な意味で使われることが

多いが、このように良い悪いでなく中立の使い方を

されることもある。


「消す」といっても、それが悪いものやじゃまなもので

あるからではなく、創造の一形態なのであろう。

換言すれば、そこに作り手の哲学が反映されているとも

いえる。


そして、日本語で元々頭高であったものを平板に表現した

ことばが生き生きとしているのは、語り手による洋服や

それが持つ歴史、作り手へのリスペクトが熱くこめられて

いるからに相違ない。


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