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じっくり書く/すばやく書く
学術論文や投稿論文を書きなれていると、一応締め切り
があっても満足のいく完成度に至らなかった場合、その回
は見送り、あえて次回まで持ち越すことがあります。
そうすることにより、評価をされる価値のあるものとして、
審査員の目に留まる確率は確実に上がる、とこれまでの
経験から言いえます。
「何を」書くかと同じくらい、「どう」書くかということ
に徹底してこだわる。
意味が伝わればいいなんて論外、と自明のごとく考える
「人文」気質に近い…?
まあ、それでこの仕事が成り立っている、と。
たとえ短い文章でも、推敲を重ねることは当然なので。
さて、上述の論文とは対照的に、留学生の受ける大学入試
の論文のなかに、短時間で書く本文の「要約」があります。
EJUにかけるような資格試験対策の労力が要らない分、
論文、小論文の試験は難易度が高いともいえるでしょう。
その際、出題された文章の「要約」と自分自身の意見文が
解答としてセットになっている場合があります。
意外にも、時間がかかるのは要約の方です。
じっくりと時間をかけ、完成度の高いオリジナルの文章を
書くのとは異なり、すばやく「枝葉末節」を切り落とし、
すでにある文章を圧縮するのは、頭のスポーツのようです。
レッスンでは、学習者の方と同時に私自身が要約を行い、
後で両方の文章を照らし合わせます。
同じ時間をかけては、フェアでないので、私の方は10分
短く、一度書いたら消してはいけない、という条件を
つけています。
原稿用紙のマス目に、鉛筆で濃く書くといういささか古風
な作業に没頭していると、何ともいえず緊張感のある濃密
な時間が流れていきます。
この手応え!

人気があるモレスキンのノート。
私自身は、文房具にまったくこだわらず、
ボールペンなら水性がいい、という
くらい…しかし、使う機会がないながら
万年筆には憧れますね。