- 日本語空間
ひとりで過ごすということ
大学に入学したとき、学部の先生方が、祝福のことばを
贈ってくださいました。
ひとつとして同じメッセージはありませんでしたが、今も
心に残っているのは、ある先生が語っていたことばです。
皆さんは、大学に在籍する4年間に三つの自立を果たして
ください。
それは、1. 経済的自立、2.精神的自立、3.思想的自立
です。
先生は、またそれを「親から金銭的に援助を受けず生きら
れること」、「ひとりでいられること」、「自分なりの
生の哲学を築くこと」と、かみくだいてくださいました。
考えてみれば、シンプルなメッセージともいえますが、
大学卒業後も、折にふれ思い出しています。
今回、思い出したのは、2番目の「ひとりでいられること」
です。
現在、私たちがそのさなかにいるパンデミックによらず、
さまざまな要因から、人間同士の分断化、「個」別化が
加速しています。
このようなときだからこそ、ひとりで過ごす時間をどう
充実させるかが、個人にとどまらない社会全体の問題と
して、捉え返されていくのではないでしょうか。

パウル・クレー『忘れっぽい天使』