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アカデミズムはどこへ行く
現在、ノーベルウィークの真っ只中で、各部門において
誰が賞を獲得するかが、熱い話題となっています。
日本は、これまで物理学9名、化学8名、生理学・医学5名、
文学2名、平和部門1名がノーベル賞を受賞。
しかし、近年、科学技術立国を支える大学院の博士課程
の学生が減少しており、過去の受賞者が、この事態に警鐘
を鳴らしています。
ひとつの道を究めるには、じっくり腰を据えて学問と
取り組まねばならないにもかかわらず、その間どのような
生活手段に頼るのか、いかに良好な環境を整えるのかが、
至難の業になっているのです。
さらに、学位取得後も、それに見合う仕事に就けるか
どうか覚束(おぼつか)ない状況で、高度な研究に踏み出す
のは勇気の要ること――。
一方、新政権の発足後、総理大臣が「日本学術会議」の
次期会員中6名を任命拒否し、大きなニュースとなりま
した。
それに対する説明責任も果たされず、当該の機関への
予算等が、今後「聖域なしに」見直されるとのことです。
各界の論客が、この件についてさまざまな意見を述べて
おり、問題は多岐にわたるものの、日本社会のなかに
巣食う“反知性主義”を認めざるをえないのは、遺憾です。
社会科学と人文科学にまたがる領域に軸足を据え、研究
を続ける身としては、いまさらながら、文理を横断し、
アカデミズムの牙城に閉じこもらず、世俗とも渡り合う
強靭な「知」が希求されねばならない、と再認識する
次第です。

今週の[東大生協本郷書籍部]