top of page
  • 日本語空間

インスピレーション

昨晩、丘の上を歩いていると、にわかに威勢のよい

音が鳴り響き、その方角を見ると花火が打ち上げ

られていた。

時刻はちょうど19時半・・・


家に帰り検索し、港のターミナルで映画のジャパン

プレミアが開かれていたと知る。

主人公のトム・クルーズ本人が、レッドカーペット

上に現れ、集まったファンと交流を楽しんだらしい。


夏の風物詩である花火は、日本では16世紀ごろから

鑑賞されてきたそうで、お盆前後に行事が開かれる

のは、故人への鎮魂のためともいわれる。


それを考えれば、現代は、何かのイベントがあるごと、

季節などおかまいなしに景気よく打ち上げられるの

だから、伝統も様変わりしたものだ――


ここで、花火にことよせ、頭のなかで瞬間的に明るく

はじけるようなインスピレーションに関する話をしたい。


こと研究に限らず、何かを極めようとしたら、まずは

基礎を徹底的に固める運びとなる。

そこまでは、自分のカラーを出したりするものでなく、

ひたすら地道に努力をせねばならない。


だが、やがて、他人より抜き出でるため、努力――

労力だけでは足りなくなる日がきっと訪れる。

そのようなとき、インスピレーションは、創造力を

もたらしてくれるはずだ。


インスピレーションを招き寄せるためには、専門以外の

リファレンスも随時増やし、広いパースペクティブを

有するよう心がけること。 何より、対象との距離が近くなり過ぎてはいけない。

それでは、気づかぬうち近視眼的になり、「世界」の

全体が目に入らなくなってしまうから。


煮詰まった時には、それまで追っていた対象から、

あえて目を逸らす時間をつくることが、意外にも肝要

なのである。


以前に、授業で扱った福岡伸一著『生物と無生物の

あいだ』の第5章「サーファー・ゲッツ・ノーベルプライズ」

は、研究とインスピレーションの関係を意識するひと

には、自然に共感できる内容と思われる。

その「サーファー」で化学者のキャリー・B・マリス 本人にインタビューした福岡氏は、彼を、研究者を縛る あらゆる幻想から逃れた「言葉の本当の意味で自由な人」 だったと語っている。

マリスは、ポスドクを渡り歩きながら、安定や地位に

しがみつかず、みずからファーストフード店で働いたり、

小説を書いたり、サーフィンに興じたりした。


そうして、ある日森林地帯をドライブしていたとき、彼の

肉眼は、車窓から見える風景を追いながら、心の眼には、

DNAがゆっくりとほどかれていくようすが映じていたのである。

「こういうふうな夢想に時をゆだねるのが私の好きなやり方 だった」。

対象からしばし身を離した時間、閃いたインスピレーション

は、彼にノーベル賞をもたらすこととなる。


だが、このような例は、「天才」にのみ占有されるものでは ない。 努力を最大限重ね、なおかつ対象への愛着がとどまるところを 知らぬなら、その「純度」は、きっとインスピレーションに 恵まれるはずだ。 PCの前で呻吟し続けても、よいアイディアが出ないなら、

いったんシャットダウンし、頭のなかに余白をつくり、五感 を解放してみよう。 そのとき、心の眼には、未だかつて見たことのないものが 映っているかもしれない。



閲覧数:32回0件のコメント

最新記事

すべて表示

柔軟な研究生活を送ろう

ここのところ、日本の大学院に進学を希望する 外国人学生が増えている。 実際に大学院で博士課程を修了した身としても、 専門性が絞られ、高度な学びをおこなえる大学院 は、大学以上に、留学としては意義あるものと 考えられる。 日本国内での大学院進学率は、依然高くないが、 優秀な外国人学生が増えることで、全体のレベル アップが図れるなら、本来の少数精鋭的なあり方 が保たれるのではないだろうか。 さて、大学

Comments


bottom of page