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シャッター街(がい)
2日前、「大阪の地下街がシャッター街に」という新聞の記事を
読んだ。
梅田駅構内に並ぶ店舗を指しているようだが、それでも一部には、
客が見え、足音が響いているという。
「シャッター街」は、衰退し、シャッターを下ろしている店が多い
商店街を指す。
それは、1980年代以降、顕著となった都市問題の一つである。
この見出しでは、決定的にそうなってしまったのか、一時的に
そのようになっているのか判然としないが、現実には、コロナ禍
による後者の例なのだろう。
一方で、全国版の新聞が取り上げることなどしない、地元の行政にも
忘れ去られたような商店街が、事務所の近くにある。
これぞシャッター街、というほかない状態となっている。
立地的に、駅から離れており、さしたる観光名所もなく、高台に
あることから、居住区の外から足を運ぶ人はもともといなかった。
「中途半端に古い」といったら失礼かもしれないけれど…
たとえば、大正っぽければ、後ろに「ロマン」とでもつきそうなものを、
もっと後の時代である昭和感にあふれていて。
手書きの広告が、あちこちに見受けられ、昼間からポップスなどでなく、
なぜか童謡を流しているのもユニークだった。
♪迷子の迷子の子猫ちゃん~…
どこか遠くで響いていたようなあの歌声も、今では聞こえない。
コロナ禍により奪われた労働の補償を! との訴えに対する答えは、
企業やビジネスパーソンなど、可視化されやすい存在には、届く
かもしれない。
しかし、ここでは、そのような訴えの声すら聞こえてこないようだ。
先日、めずらしく開いていたリサイクルショップで、急用でもない
小さい品を買った。
店主は、高齢の女性で、マスクを外した顔は日焼けして、お金を
受け取る手もしわだらけだった。
年金はもらっているのかもしれないが、収入は、おそらく1日数百円
かゼロかという商売をしているなんて、気が遠くなりそうだけれど…
それでも、「労働」という意味において、見捨てられてよいもの
ではありえない。
本当は、スーパーの方が、割安だし、カード払い可なので便利に
決まっている。
それでも、ここに来て、買えるものにはできるだけ、現金を使おうと
思わされたのだった。
