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レトロモダンー袴にブーツでー

今日、臨海地区を歩いていたら、大学の卒業式に向かう
学生たちの群れを目にしました。
卒業式の服装は、基本的に規定がありません。
しかし、男子は全員スーツ姿。
女子は、これまた全員がレトロモダンともいうべき袴姿
(はかますがた)で。
純和風の着物姿は見当たりませんでした。
中でも、足元が草履(ぞうり)でなく、ブーツなのが、
和+洋でおしゃれな感じ。
戦前の女子学生を参照しているのがわかります。
平安時代に、一定以上の身分の女性が身に着けていた袴が、
あらたに復活するのは、近代に入ってからです。
女子に対する高等教育がはじまり、着やすさの問題を考慮し、
当初は、男子向けの袴を身に着けることが許可されました。
ところが、現在と異なり、いわばジェンダーの規範を揺るがす
服装は、男性の領域を侵犯するとも受け取られ、そのような
身なりで自由に行動する女子には、批判が集中したのです。
そのため、当時の袴姿には、どこか硬派な気質が込められて
いましたが、現在は、心おきなくおしゃれできるためか、
凛々しさよりも華やかさが全開のようですね。
それにしても、色々な時代のなかで、参照され続ける近代の
この時期は、旧くてあたらしい魅力をとどめているといえま
しょう。

読売新聞に掲載された小説「魔風恋風
(まかぜこいかぜ)」(1903年)
いわゆる才色兼備(さいしょくけんび)の
主人公は、悲劇的な結末をたどる。
「あたらしい女性」は罰せられねばなら
ないという教訓…!
すでに幕末、坂本龍馬は袴にブーツを
合わせていたのに。