いささか唐突ですが、添削に時間がかかるのは、どのような
日本語の文章だと思われますか?
答えは、ネイティブレベルに近い外国人学習者の文章です。
なぜなら、明らかな間違いが(×)がない代わり、微妙に
不自然な表現(△)が混じっているからです。
一見すると、正しいようでありながら、違和感も残る・・・
それが何なのか、洗い出すまでには、何度も繰り返して文章
を読まねばなりません。
この3日間、対面授業の合間に、日本の大学に在学する留学生
の卒業論文の添削をおこなっていました。
それが、上述したような相当こなれた日本語の文章です。
以前に何度か書きましたが、校正や添削という「見直し作業」
の鉄則は、
1.文章をPCの画面上でなくプリントアウトして読むこと。
2.声に出して読むこと(誰かに聞いてもらうとなお良い)。
3.時間を置いて読むこと。
です。
それは、取りも直さず、書かれた文章から距離を置き、客観的
な視点を設ける態度に他なりません。
長い文章を書いた経験がない人には、実感が湧かないかもしれま せんが、このような作業を根気強く繰り返すことで、文章の精度 が格段に上がるのです。 論術のテーマ(何)がたいせつなのは、いうまでもありません
が、それを容れる表現(どう)により、見え方も大きく異なって
きます。
すなわち両者は、分かちがたく結びついているのです。
『日本語空間』に、卒業論文の添削を依頼してくる学習者の
ほとんどは、自分一人で論文を完成させても、日本語自体は
パスが可能なレベルです。
それでも指導を求めてくるのは、日本語の正確さにとどまらず、
論理性や構成、修辞といった論文の要まで意識しているから。
上級になればなるほど、希望は高く、そのことによって、卒業後
にも「使い物」になる日本語とロジカルシンキングを鍛えつつ、
羽ばたいていこうとするのは、頼もしい限りと感じています。
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