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対象を思いやる

歯の調子がよくないのに、そのうち、そのうちと思って いる内、痛みが増してきたので、焦って歯科に駆け込んだ。 歯の状態をチェックしてくれる歯科衛生士、歯科医が、 ともに女性という珍しい歯科で、腕がとてもよく、変な いいかたかもしれないが、かかるのが楽しみなのである。

歯は、どんなにケアしても、時間が経つと汚れてくる。 それで、口中を見せるだけでも気が引けるのに、歯科衛生士 の方は、まるでサービス業のようにソフトに接してくれる。


施療中、歯から多少血が出ても、痛みがまったくない(金属の

器具を使っているのが信じられない)ので、魔法にかかった

かのようだ。

その上、口中を一緒に確認するとき、「鏡をお持ちになって

いただけますか?」などと、実に美しく話すので、感動して

しまった。


そういえば、以前、日本に長く住んでいる女性の学習者が

「私は、女医さんのほうがいい」というのを聞いたことがある。

「手つきからして優しく」、「いたわりの気持ちが伝わる」

とのことだったが、この歯科に来て、その意味が理解できた。

無論、男性にも、細やかで思いやりのある医師はいるだろうが 社会進出が遅れた女性の職業人は、よりプロフェッショナル たらんと、自己に厳しく努めているのかもしれない。 昨晩は、夜の7時から9時、9時15分から11時15分と、二つの 授業が続いた。


大学の3年次編入を目指している方と、日本企業への就職を

目指している方で、どちらも、短期で結果を出さねばならない

ため、緊張感がある。


共通しているのは、急いで、フォーマルな表現を身につけねば

ならないという点だ。


編入試験を受けようとしている方は、これまで、日本語学校、

専門学校に通ったが、簡単な作文はしたことがあるものの

書きことばをまったく教わってこなかった。


です・ます体しか知らず、志望理由書も、ソフトな書きことば

で「ちゃんと」、「頑張ります」などという表現を使っている

ので驚かされた。

就職試験を受けようとしている方は、昨晩の初めての授業で

「メッチャ」ということばを連発するので、それは「俗語」で

面接のような公的場には適さないと教えたら驚いていた。


日本語学習は、会話の塾に8か月通っただけで、あとは独学だ

という。

肝心な「会話」の内容は、完全なフリートークのスタイルで、

教師が示したテーマについて、残り二人(社会人と主婦)と

話すらしい。


一口に「日本語学習」といっても、目的は、皆異なるので、

集団レッスンでは、完全に満足する授業を受けることが難しい。


しかし、教師は、一人一人と話す機会もあるはずで、そもそも

最初に、日本語学習の目的は聞き知っているはずだ。


使い分けを好む日本語は、話しことばと書きことば(フォーマル

な表現)に乖離(かいり)がある。

その性格を踏まえ、学習者の切実な目的に沿い、ニーズ分析を

おこなってこそ、初めてプロフェッショナルといえるのでは ないだろうか?





    ジョージア・オキーフ 「タチアオイの白と緑―ペダーナル山の見える」

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