- 日本語空間
交わらない視線
慌ただしい日々のなか、屋内にこもりっぱなしにならぬ
よう、せめて1時間でも外を歩くことを心がけています。
ただ健康のためというより、街や風景を眺めることは、
このうえなく興味深く。
槇文彦氏は、良書『漂うモダニズム』のなかで
「都市とは基本的に、人間一人一人の孤独を守る場所なの
ではないか」と語ります。
そこで引用されているのが、スーラの『グランド・
ジャッド島の午後』(1884-1886)。
一見すると、19世紀の平和なブルジョワ家族たちのようす
でありながら、ひとびとは(犬も猫も含め)誰ひとり互い
をみたり、一か所に視線を集中させたりしていない…と。
1928年の東京に生まれ、近代の空気を肌で知る槇氏なら
ではの観察眼といえるでしょう。
