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人と「被(かぶ)らない」ということ
人間の行動様式は、人間という種ならではの性質に基づく
と言えるが、それ自体、仮のノルム(規範)であり、絶対
不変のものではない。
極言すれば「移ろう」ものなのであるから、その意味では、
型にとらわれすぎるべきではないだろう。
逸脱までいってしまえば、生きていくことも困難になろう
が、そこまで行かないにしてもみずから可能性を狭めて
しまうのは惜しい。
型にとらわれないということからの連想になるが、少し
前に書いたように、日本では現在、若者を中心に古着が
人気である。
パリのストリートスナップなど見ると、古着はマストアイテム
として定着しており(老若男女を問わず)、皆が異口同音で
エコロジーの重要さをサラッと述べるのには、さすがと
思わされる。
だが、日本の古着好きにおいては、環境への配慮以上に
ファッション性の方が勝っているようだ。
すなわち、彼らが古着を選ぶ理由のトップに「人と被らない」
(ほとんどの服が一点物のため)ということがある。
それはファッションにおける「こだわり」と言えるが、
生き方にも「人と被らない」ことが取り入れられるなら、
多様性の時代には、いかにもマッチしているのではないか。
やや牽強付会になるが、高い評価を受ける論文の最重要点
も「先行研究と被らない」こと、すなわち新規性だ。
無論、数多(あまた)の先人の学知があって初めて、後進
の研究は成り立つので、100%自分自身のオリジナルなことば
で人間が何かを表現することは、ほぼ不可能である。
しかし、すでにある理論や思想に依拠しながら、どこかに
「被らない」部分を探すことはいくらでも可能だ。
さあ、ワクワクしつつ己ならではの立ち位置を固めよう!

吉崎オリィ氏は、不登校を経験した後、 社会から孤独をなくすため、人と人を つなぐロボットの開発に着手した。 https://www3.nhk.or.jp/news/special/news_seminar/senpai/senpai135/