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分断か多様性か
前首相の葬儀を国葬にするという政府の決定に対し、国民や
野党から、反発の声が上がっている。
情報化社会に身を置くと、それ以前のことが、リアルに感じ
られないほどだが、情報の渦に流されそうになっても、客観的
な判断力を持つよう努めたいものだ。
議論に不慣れな日本人には、意見が真っ二つに割れたりする
と、「分断」と言い騒ぎ立てる傾向がある。
だが、全員の意見が一致しさえすればよいというものでなく、
意見が異なっていても、それが分断とは限らない。
むしろ、異同の中にもグラデーションがあることを心に留める
べきだろう。
多様性、ダイバーシティ(漢語かカタカナ語の違いにすぎないが)
と唱えながら、無理やりひとつにまとめようと働きかける意志は、
反動めいている。
post-truthの語が叫ばれて久しいが、言説に屈しない人間の努力
により「現実」が明るみに出てきている今日であるからこそ、
他に流されない一人一人の思考能力が問われているのだろう。

アントニオ・マンチーニ 『小さな神学生』(1872)