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原風景とホスピタリティ
コロナがようやく収束し、外国人観光客が一気に戻ってきているが、
一般的な「観光」ではない異文化を体験しようとする人々もいる。
その一つが、四国の霊場を巡る「お遍路(おへんろ)」の体験だ。
国籍、年齢、性別を問わず、さまざまな人が訪れているようだが、
特徴的なのは、最低でも2人、多くは1人での旅であるということ。
霊場は、メジャーな観光名所と異なり、基本的には日本人が訪れる
場所なのに、そこに精神的な「原風景」を見出す外国人が少なくない
ことは興味深い。
些末なことがらに縛られながら、あわただしく過ごす日常を逃れ、
田舎の風景に見入る。
簡単なようで、現代社会ではなかなか難しい時間の過ごし方だ。
だが、そういった時間に思い切って足を踏み入れたなら、景色も
人間も同じ部分が浮かび上がるのかもしれない。
四国の人々が、霊場を巡礼する「お遍路」さんを、常に歓待して
きたということは、恥ずかしながら知らなかった。
そういった損得を超えたホスピタリティ(それ自体元来計算が入ら
ないものでもあるが)を、相手に施すことで、自分自身も幸せになれる
というのは、何と貴いことなのかと感じる。
このような「おもてなし」の原形を大切にしたいものだ。