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基本の「何を」と「いかに」
学術論文に限らず、文章を書くときに考えなければならない
のは、大きく分けて2点。
すなわち「何を」と「いかに」である。
自分ならではの文章にこだわり、他人に差をつけたいなら、
漫然と書きたいテーマ、内容を好き勝手に書いても効果は
上がらない。
「何」について、あるいはどのようなテーマを設定するか
と同時に、「いかなる」構成、修辞で、またパースペクティブ
をどこまで広げるのか等、後者に関し、より意識を高く
持つべきだ。
きわめて基本的なことであるにもかかわらず、現実に、
「何を」にはこだわりながらも、「いかに」の部分を意識
しない人が多いように見受ける。
しかし、同じテーマを設定しても、「いかに」書くかが
異なれば、完成した文章もまったく異なったものとなる。
むしろオリジナリティ、新規性が、「何を」だけにこだわって
も創出されないことを心得れば、己の軸足も定まり、ブレる
ことがなくなるだろう。
砂漠の真ん中に投げ出されたら、一人では生きていけないが、
研究の世界で、最初から無難なことを選択していたら
研究の意義自体が存在しない。
以前、ノーベル物理学賞を受賞した日本人研究者が、後進
に投げかけたことばのように、「迷ったら人と違う道に
踏み出すべき」だ。
ただし、それは何から何まで人と違えばいいということ
ではなく、たとえば「いかに」の部分にこだわることも
充分、不羈独立の道をいくことを意味すると考えられる。

京都御苑「森の文庫」