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学究・ジェンダー・エイジング
先月の初めに、明るいニュースが外国から届いた。
今年の夏まで、オンラインで教えていた社会人の方(男性)に、
初めての子どもが生まれたという知らせだった。
今よりも、コロナの感染者が多い時期だったこともあり、
涼しげな目をした赤ちゃん(女児)の写真は、暗い日々に光
を与えてくれるようだった。
予定日は、夏の終わりだったので、その前にいったん授業を
休み、「できるだけ早く戻ってきたい」といっていたのだが、
「しばらくは子育てに忙しいので、年末ごろまで待って
いただけますか」というメッセージが添えられていた。
「子育て」ということばを、男性が自然に使う時世である。
3日前のニュースでは、国家公務員の育児休暇率が、51%と
過去最高になったとことが報じられていた。
今週、ノーベル物理学賞を受賞した真鍋さんのインタビュー
で印象深かったのは、夫婦間の役割だ。
彼が、受賞した要因に、学究のため最大限の時間を使える
ようにというパートナーの欠かせない配慮がある。
科学といえば、理系に限らず、社会科学、人文科学と幅広く
存在するが、とりわけ抽象度の高い思考を要する分野では、
徹底的に雑事を排し、集中して研究をおこなわないと成果は
出ない
一昔前の研究者のなかには、結婚前に、完全分業を可能に
してくれるという条件で、パートナーを探すケースも珍しく
なかったようだ。
医療技術が、飛躍的に発達し、平均寿命は伸び続けている。
しかし、より大切なのは、病気を得ずに自立して日常生活を
送れる健康寿命だ。
コロナ禍が続くなか、おくやみが報じられた知識人や研究者
のなかに、90代の男性が多いのに関心をひかれた。
つまり、1930年前後の生まれになるのだが、過酷な戦争を
青少年時に体験したことから、生の哲学を鍛え上げたのでは
ないかと想像した。
その強靭さが、健康であることはもちろん、若いころに劣る
どころか、長年の蓄積により「知」を研ぎ澄まし、人生の
最後期における才能の開花という偉業をなさせるのだろう。
さて、学習者の方のお子さんが成人するころ、世界はどう
変わっているだろう。
おそらく、そのころには、パートナーの理解に恵まれ、
ノーベル賞レベルの才能を発揮する女性の科学者が、アジアにも
とうに出現していると想像される。