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山場(やまば)
自分自身の論文を書くか、学習者の論文をサポートするか、
とにかく執筆に関わる日々を送っていると、締め切りから
ボトムダウンするようにして予定が決まっていく。
すると、自然に無駄を極力省きたい想いが湧き、「使える」
時間の確保に貪欲になる。
修士課程2年の時、同じゼミの学生が、「今年の夏は1か月
くらい山にこもりたい」と言っていたことを、今でも時々
思い出す。
山にこもるのは、無論、翌年の1月に提出せねばならない
修士論文に集中するためだ。
生活の要素が多いと、一々足を引っ張られてそのつど立ち 止まり、集中力がそがれてしまう。
彼のことばに、返事をしたかしなかったかは、おぼえていない
が、学生に与えられた最大の恩恵? ともいえるモラトリアム
の最後に、誰もいない場所で思う存分構想を練りたい気持ち
は、その場にいた誰もが共有していたと思う。
さて、現在、学位論文を書いている多くの学生が、山場に
さしかかっていることだろう。
たくさん論文を書いていると、あといくつくらい越えねば
ならない「山」があるか、何となく想像がつく。
そこで降りてしまわず、踏みとどまって尾根を目指すのは
大抵至難の技だが、経験を積むうちに胆力が養われてきて、
山を越えた後には、一回り成長しているのだ。
自暴自棄になって判断力を失ったり、気を抜いて滑り落ちたり
しないよう、最後までしたたかに歩を進めよう!
