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師への逆質問

「逆質問」ということばからは何が思い浮かぶか?

 

大学生以上であれば、まず就職活動の面接時における

それが、すぐに思い浮かぶだろう。

 

面接の最後に、面接官から「何か質問はありますか」と

聞かれた際、「周到に」用意した質問を「自然な」感じで

返せればスマートだ。

 

それは、現実に知りたいことを単に質問するのでなく、

質問内容により自分自身を相手に印象づける機会となる。

採用の可否は、総合的に判断されるので、最後まで

気を抜かないことが肝要なのはいうまでもない。

 

試験などにおいて、最初に質問を発するのは主として

目上の人間なので、「逆」には、目下から目上へと

いったニュアンスも含まれる。

 

このことばを聞いて、個人的に思い出されるのは、

博士課程での出来事だ。

 

大学院で同じテーマを研究している教員が見つからず、

仮に籍だけ置いてもらうというかたちで、修士課程から

博士課程までゼミを転々としていた私は、博士論文の

執筆が後半に差しかかったころ、最後に置いてもらえ

そうな研究室を探していた。

 

学際的な研究科だったこともあり、先生方の専門分野も

人文科学から社会科学の領域にわたっていたので、

専門は重ならないが、扱う時代とキーワードが部分的に

一致する教員にゼミ移籍のための面談を申し込んだ。

 

公開されている研究業績以外には、教員の人となりを

知るすべはなかったのに、書かれた論文を読み、ひかれる

ところがあり、「直観」でお願いできるのではないかと

期待した。

 

勘は当たったというか、研究内容は互いに相当異なるにも

かかわらず、面談では核となる部分について、しっかり

ことばを交わすことができた。

 

そして私は、面談の最後に、用意してきた質問を発した。

「先生が学生を指導するうえでいちばん大切にされているのは

どのようなことでしょうか?」

 

師は、間をおかずに静かな口調で答えた。

「学生の考えを尊重して、無理やりねじまげたりしないことです」。

 

この答えにより、私は最後の研究室を決め、幸いにも信頼

できる師のもとで博士論文提出に至ったのである。




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