• 日本語空間

建前(たてまえ)とライスケール

先月からサポートしてきた学習者の方の就職活動で、

ひとまず結果が出た。


5月に受けた2社が、両方とも1次試験をパスし、

1社で内定をもらい、残る1社も2次面接(役員面接)

に進むこととなった。


『日本語空間』は、基本的にアカデミックな論述に

関する指導をおこなっているが、以前からの縁で、

総合的な就職活動のサポートをおこなうこともある。


この方も、2年前に大学院の修士論文の執筆を指導

した関係で、日本での就職活動をサポートすることと

なった。

その時もきっちり結果を出したが、多くのことばを

交わしていたため、どのような方なのか、ある程度

理解できており、今回の指導に結びつけやすかった

といえる。


ただし、新卒ではなく、就業経験があるので、実際

には、転職活動と称する方が適切だ。

そうして、転職だからこそ留意すべき点がある。


それは、志望動機や自己PRを、新卒のとき以上に力

を入れて書かねばならないことだ。


特に、二次面接を控えている企業は、採用要件に、

「人柄や熱意を重視する」と書いていたので、その点

に合わせ、力のこもった履歴書と職務経歴書を完成

させたのだった。

努力が実り、両方の会社の人事担当者から、「是非

お会いしたい」ということばまで引き出せたのは、

何より幸いなことである。


就活経験者なら、百も承知だろうが、一つの履歴書と

職務経歴書を、コピー&ペースト的に「使い回す」こと

はありえない。

もし、そんなことをしたら、数多くの応募者と接して

きた担当者にはすぐに見破られ、確実に不合格となる。


つまり、単にありのままを示すのでなく、企業の側に

歩み寄った上で、自分自身の人物像を形作りアピール

すべきなのである。


現在では、ほとんどの企業が「求める人物像」、

「この仕事に向いている人・向いていない人」等を

明示しているので、それを意識し、 志望動機や自己PR

を組み立てるのは、いわゆる鉄板となる。


その際、己の長所や美点を多少強調するのは、不誠実な

態度とはいえないだろう。


日本でいうところの「建前(たてまえ)」と「本音

(ほんね)」は、場面によっては、ネガティブな捉え方

をされることもある。

一方で、むき出しの自己をさらけ出し続け、社会生活

を送るなど困難なのだから、建前も、使い方によって

人間関係の潤滑油になりえる。


ただし、難しいのは、そのさじ加減だろう。


今回、学習者の方と、適性検査の「性格編」を解いて

みたが、その方は、ライスケールで引っかかって

しまっていた。

たとえば「私は今まで一度も嘘をついたことがない」、

「私は今まで他人のことを羨ましく感じたことがない」、

「私は今まで一度も病院に行ったことがない」といった

ような質問だ。


この手の質問で、「いいえ」を選んだら、いくら履歴書

で優等生的なふるまいをしていても、疑わしい人物と

みなされてしまう。


本当に就きたい職業だとしても、さまざまな角度から

「試される」のは、時に悩ましい。

私自身が、試験を受けるのでなくとも、何度も共闘して

きた身としては、その切実さが痛いほど伝わる。


だが、少し距離を置いて眺めれば、それは労働者と雇用者

双方が、過分な期待を抱き、ミスマッチの結果に終わらない

ために求められる過程ともいえるのだろう。





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出会いがあれば別れがある。 それは、理(ことわり)なのに、 一抹の寂しさを拭うことができない。 『日本語空間』がスタートしてから、 今までいちばん長く(2年半!)学習 を続けた方が、今月中旬に国へ帰る。 毎週日曜日の晩、PCの画面で顔を 合わせながら、実際にお会いする機会 は一度もなかった。 それでも、何の問題もなく、最後まで 円滑に授業を進められたのは何よりだ。 帰国後は、日本語を使う頻度が減る