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断捨離(だんしゃり)
「断捨離(だんしゃり)」ということばがある。
最初に提唱されたのは1970年代で、コロナ感染拡大の時期、
再び注目されるようになったらしい。
入ってくる不要な品を断つ「断」、家にあるガラクタを
捨てる「捨」、ものへの執着から離れる「離」。
つまり、不要なものと必要なものを見極めるということだ。
私自身、大学院で学ぶ前は、生活のこまごましたものに
対する興味もあった気がするが、論文優先の生活を送るうち、
シンプルな生活を送りたいと願うようになった。
研究のため、時間の無駄を省き、雑念を払しょくするには、
物のない生活がいちばんだから。
博士課程修了後も、しばらくはそのようにどこか無機的な
環境を好んでいて、本を読む時間が少しでも多く取れるのを
幸いに感じていた。
ところが、保護猫が事務所に来てからは、そのように自分勝手?
な生活を送ることはできなくなった。
餌の用意、衛生面への配慮、目の病気を治すための病院通い。
振り返ると最初のころは、論文を書いていて、遊んでくれと
せがまれると、適当にごまかしてきちんと相手をしてあげなかった。
しかし、ことばを話さない存在が、仕草や鳴き声で熱心にうったえて
くるのを見て、心を動かされずにはいられなくなった。
大量生産、大量廃棄の時代に、SDGsの意識は大切だが、あまりにも
生活の要素をそぎ落とし過ぎたら、無機的かつ非人間的になるかも
しれない。
物の要・不要は見極めながら、人間以外の「自然」に目を向ける
時間を大切にしたい。
