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有機的なるもの

平安時代、清少納言は『枕草子』の中で「〇〇なるもの」と

して、自身が感じた有形無形の事物、事象を列挙している。

あくまでも主観だが、論文ではなく随筆なので、その偏りも

個性として読め、興味深い。


たとえば彼女は、「あてなるもの(上品なもの)」として、

薄紫色の服に白い服を重ねたもの

鳥の卵

水晶の数珠

藤の花

梅の花に雪が降りかかった様子

小さい子供がイチゴを食べている姿

などと共に、

削った氷に甘いシロップをかけて新しい金属製の器に入れたもの

を挙げているのである。


現代の夏の風物詩である「かき氷」も、すでにこの時代に

存在したことが、『枕草子』からは読み取れる。


「力(パワー)」やゆるぎない存在でなく、何気ないことやもの、

儚い現象への損得勘定抜きの愛惜が好ましい。

スローライフ的時間の流れを感じさせつつ、きっぱりとした

物言いもまた…


コロナ禍が世界を襲ったのは、私自身が博士課程を修了した

直後だった。

在学中は、ひたすら論文中心で、修道僧のような? 日々

を送っており、他に目をやる暇もなく、むしろ生活の要素

を削ぎ落していたので、無機的で非人間的ともいうべき

環境に慣れ、むしろそちらを心地よく感じていたのである。


学位を取得したのはよいが、その後身の振り方を考える中

で新常態になじむこと難しく、精神的な彷徨も味わったが、

現在ではコロナが流行したからこそ、既成概念から解放

されたことには感謝している。

そこであらためて思うのは、人間が生きていく上で欠かせ

ないのは、有機的なるものではないかということだ。

それらを直接「利用」するのでなくとも、目にすること、

触れること、囲まれていることで生かしてもらっている

という手ごたえがある。


有機的なるもの――真夏にたちのぼる陽炎、夜のしじまに

ひそむ動植物の気配、消えゆく前にしばし明るむ夕日、

庭に降り注ぐ雨の音、体をくつけてくる猫の体温と心臓の

鼓動。


1000年以上前の女性作家に倣って――。


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