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江戸時代の犬騒動/現代における動物の受難
「日本史」の授業で学ぶできごとに、江戸時代の第5代将軍・
徳川綱吉(とくがわつなよし)が発した「生類憐みの令
(しょうるいあわれみのれい)」と、それを巡る騒動があります。
江戸では、武家が元々飼っていた犬たちが、管理の不備等から
大量に野犬化し、問題になっていました。
そこで綱吉は、現在の「中野」の辺りに、巨大な犬小屋を建て、
数万匹の犬を保護します。
大きな戦争の起こらない、天下泰平の世に生育した綱吉は、
仁政を施し、人々を啓蒙しようとしました。
犬などの動物を人間の上に置くなど笑止である等、後世の評価
はよろしくありませんが、そこには、動物に限らず、捨て子や
病人をも粗末にすべきでないというヒューマンな思想が、
根底にあったのです。
諸々の経緯から、現在の日本では、野良犬をほとんど見かけない
のと対照的に、野良猫は、あちこちで見かけます。
筆致にしがたく遺憾なことに、2018~2019年に殺処分された
猫は、約3万1千匹。
そのなかで、子猫は成猫の2倍にあたり、内訳としては離乳期前
の赤ちゃん猫が多数を占めています。
子猫が事務所に迷い込んできたことから、最近調べて知ったの
ですが、保護された犬猫に引き取り手がいない時、殺処分を行う
機械を、別名「ドリームボックス」と呼ぶ、とのこと。
「夢を見るように」安らかに旅立ってほしいとの願いからつけら
れたそうですが、このようなことばの使用方法は、思考停止状態
と指摘する以外、表現が見つかりません。
一方で、殺処分をゼロにすべく、ボランティアが必死に尽力し、
それを達成した地域も、現実に存在します。
きれいごとでは済まない弱肉強食の世ですが、動物を「畜生
(ちくしょう)」と見なさず、生き物としては人間と変わらない
と捉えうる人がいることは、また救いです。
現代の日本を見たなら、徳川綱吉は、何というでしょうか?

歌川国芳 画『御奥乃弾初』
犬の「狆(ちん)」は、大奥で飼育された
のが発端となり、熱狂的なブームを呼んだ
そうです。