- 日本語空間
準備された心
今年の初めに、カウンセリングをおこない、それきりに
なっていた方が、8月に入り、再び連絡をしてきた。
間近に、就職試験を控えているということで、その対策
をおこなうこととなった。
前回は、いきなり「何を勉強しますか?」といわれ、
学習者の方の希望に沿いながら計画を立てますと答えた。
話している間、あまり反応がなく、その後も連絡が
なかったので、何となく興味を持っただけか? と
考えていた。
しかし、実際には、前年のクリスマス、にわかに「そうだ、
日本語を勉強しよう!」と思い立ち、年頭の時点では、
手つかずの状態だったとわかった。
「何を勉強しますか?」は、日本語表現としては、正しい
が、この「場」にはそぐわない。
そうではあるが、知っている表現を、精一杯使っていた
のだろう。
さらに、音声スカイプだったので、相手の表情が見えず、 事情を理解しづらかったのである。 やはり、「非言語コミュニケーション」は大切だと、再認識 させられた。
合わなかった8か月間は、独学を中心に、勉強を続け、先日、 JPTを受けたというのだから、むしろ本当に努力していたのだな、 と感心しきり。
すでに中国語、英語が堪能なので、短期間でさらに日本語力
をアップさせ、良い仕事を得たいと張り切っている。
ニュースを見るたび、ため息のひとつもつきたくなる状況に
あり、外的状況が変わるのを、いつまでも待たず、行動に出る
人が存在する。
だが、この方の場合、進もうとしている分野が、コロナで打撃を
受けているので、どうして「今」、そこに就職したいのか?
素朴な疑問をぶつけてみた。
答えは、今は、業績が落ち込んでいるが、その企業自体、大手で、
倒産の心配はないし、数年後、コロナが終息したら、ビジネスの
大きな波が来ると見込まれるから、というものだった。
外的状況に、振り回されず、何があっても対応できるくらい
自身の内面を鍛え上げる!
このような心構えなら、たとえ予想が外れても、びくともしない
総合力が、おのずと身についているだろう。
そして、やはり、チャンスは、「準備された心」に舞い降りるのだ。

林和郎(はやしわろう)設計 「子午線ライン 明石客船ターミナル」