top of page
  • 日本語空間

珍獣出現(ちんじゅうしゅつげん)?

先日の授業で、珍獣(ちんじゅう)ということばが出てきたとき、

それは具体的に何を指すのか? という質問を受けた。

字義どおりに解釈すれば、珍しい獣(けもの)。


“動物”ではなく、“獣”としたところに、人間とのさらなる隔たり

が表現されている。


人に言ってもなかなか信じてもらえないのだが、事務所の近くで、

たぬきとハクビシン(おそらく)の姿を、それぞれ2回、目撃した

ことがある。


ぼってりした体型のたぬきは、こちらの視線に気づいてもじっと

動かず、見返してくるほどだったのに、鼻の上に白い筋がある

流線形の姿をしたハクビシンは、サッと駆け抜けていった。


たぬきは珍獣と言えないが、ハクビシンは、それに該当するか?

と思いながら、調べてみると、最近は都会にも出現するらしく、

そうなると希少度は下がるかもしれない。


当地は、住宅街で、それも庭を備えた家が多く、都会にしては

緑や花があふれている。

それが、緊急事態宣言解除後から、にわかに建築ラッシュとなり、

新しい家が立て続けに建った。


空き地がならされ、草が根こそぎにされていくのを目にし、動物

たちの棲み処がなくならないかと、複雑な想いに駆られる。


動物ではないが、人気キャラクターのムーミンは、かなり前から

日本では親しまれてきた存在だ。

以前、留学生から、ムーミンは「かば」だと思っていたと言われ、

一緒に笑った記憶がある。


確かに、ムーミン一家も、ガールフレンドとその兄も、体の色や

髪型が少し異なるくらいで、ほぼ同じ体型をしているが、実際には、

「ムーミン」と「スノーク」という種族に分かれる。


収集家のヘムレンさんも、一見スリムな「かば」のようでありながら、

「ヘムル」という種族なのだった。


ムーミンのシリーズを、初めて読んだのは、小学3年生の時で、

絵本でなく小説のほう。

アニメーションでは、子どもが親しみやすいように、話がやや単純化

され、ファンタジーの要素が強いが、小説の世界はそれと異質だった。


子ども心にも、陰影のある物語の奥に隠された何かが、漠然と感知

されたのである。


今思えば、そこにはどんなに困難であっても、人間が引き受けなければ

ならない「孤独」の意義、また孤独と引き換えの「自由」や、他者を

尊重することで得られる自己の居場所などが、示されていたのだろう。


ポストヒューマンの今日であれば、その他者に、人間以外の存在が

含まれることには得心がいくというものだ。


ムーミンたち「トロール」※の世界から見れば、われわれにおける

「日本人」、「○○人」といった区別も、ほとんど意味をなさない

のかもしれない。


※主人公ムーミンの正式名は「ムーミントロール」。

 トロールは、北欧の伝説に登場する妖精を指す。





















 4年ほど前に、トーベ・ヤンソン氏は、

 LGBTQの当事者であったと知った。

 驚くよりは、自然に納得がいった。





















  第二次世界大戦中、反戦の姿勢を貫いた

  ヤンソン氏は、15歳のときから政治風刺雑誌

 『ガルム』に、実名で挿絵を描き続けた。

 収奪を繰り返すヒトラーと共に、小さく

 描かれたムーミンの原形が見える。

閲覧数:33回0件のコメント
bottom of page