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紋切型(もんきりがた)

「常套句(じょうとうく)」という語がある。

やわらかく言えば「決まり文句」で、場面により肯定的、否定的、

どちらの意味合いも含む。


たとえば、ビジネスの場面において、それ自体積極的な意味を

持つのでなくとも、決まり文句をもちいなければ、仕事は進行

しない。


特に、会話のはじめに、クッションことばとして、このような

表現は常用されている。


しかし、毎度のことでなく、襟を正し、平身低頭せねばならない

特別な場面で、このような表現は適切か?


先日、元法務大臣が、参議院選挙に際し、地元議員を買収した

事件があった。

受け取った側の市議も、「危うい」と感じながら、ポケットに

「ねじこまれるよう」だったので、「断る選択肢がなかった」

という。

→いやいや、あるハズでしょ!


驚くべきなのは、1億5千万円もの選挙資金が、自民党から

提供されており、その一部が使われたのではないかという疑惑だ。

それゆえ、潔すぎる? 辞職願は、与党による「トカゲのしっぽ

切り」とも指摘されている。


今回、気になったのは、被告による所感のなかの「万死(ばんし)

に値(あたい)する」という表現だ。

“皆様の信頼を裏切ってしまったこと、万死に値すると考えます。

お金で人の心を「買える」と考えた自らの品性の下劣さに恥じ入る

ばかりです。”(本文より抜粋)


「万死に値する」は、「何度も死なねばならないほど罪が重い」

の意。


一方で、被告は、裁判において、金をばらまいた理由を「政治的

に孤立していたので、仲間がほしかった」とも語っている。

法を専門とする立場にありながら、うんざりするほど「ゆるい」

ことばで述べられたこちらの方が、むしろ本音だろう。


当人でなく、第三者が、「それは万死に値する」行為だと批判する

ならともかく、かほど倫理を無視したふるまいをしながら、今さら

「それは万死に値する」などと、他人事のようにのたまうとは。


常套句のなかでも、真摯な意味をもつ表現を、そぐわない場に

もちいれば、それは「紋切型」になる。

無意識であれ、そこには、当人の思考停止状態が露呈している。












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