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締め切り、それは...
締め切り、それは、きつい「縛り」であるとともに、この上ない
カタルシスをもたらす「解放」! …といいたい。
学位論文のほかに、修士課程ともなると、研究業績を意識して、
意欲的に論文の投稿をおこないます。
研究業績が増えてくると、ときには、外部から「寄稿」の依頼を受ける
こともあります。
以前書いたように、私は、自身が志した分野の先行研究がほとんど
なかったこともあり、1人の教員に師事する経験を持ちませんでした。
出発からして、太平洋に木の舟を浮かべ、ひとり漕ぎ出すといった風
だったのです…今思えば。
しかし、専門外ではありながら、リファレンスを多く持つベテランの
教授―研究者を育てる意思のある―に出会い、研究を進める上での
「基」となる貴重なアドバイスを得ました。
なかでも「活字化されたものを増やしなさい」という教えは、有意義
なものでした。
→「論文」でなく「活字化」という広い枠の示唆(しさ)!
そこで、投稿論文以外にも、こちらから声をかけてニュースレターに
記事を書かせてもらったり、書評などをおこなったりするうちに、
全集の月報や雑誌への寄稿を、依頼されるようになりました。
つまり、自分自身で、学位論文の完成という「大きな締め切り」と同時に
「小さな締め切り」を、可能な限り作っていったのです。
そうやって、心の「張り」を保つことは、モラトリアムになりがちな学生
生活―同時にそれこそ学生の特権で、Viva!ですが―には、大切であった
と考えています。
締め切りができると、生活は、それを中心に回っていく。他のことは、
すべて後にして。
しかし、締め切りがあるのは「救い」。
なぜなら、一度勢いづいたら、締め切りがない限り、延々と書き続けている
でしょうから。

風祭哲哉 撮影「宗谷の白い貝殻の道」
北海道の宗谷岬(そうやみさき)は、日本の
北端(ほくたん)に位置します。
鹿の足跡(あしあと)の先には、日本海の
大海原(おおうなばら)が広がっています。