留学生の話を聞くと、勉強だけでなく、日本人教員との
意思の疎通に悩んでいる話を聞くことが少なくない。
いずれの場合も、外国人である学生の方が歩み寄ろうと
努力しているのに、なかなか配慮をしてもらえないようで、
もどかしくも残念にも感じる。
各々の個人的な事情はともあれ、数ある国の中から日本
を選んで学びにやってきているのだから、どうか良い学校、
良い師に巡り会ってほしいものだと願わずにはいられない。
教師の役割は色々あれど、学生の背中を押してあげること
は大切で、それにより彼らの運命が好転することもある。
私自身、学校と名のつくものの最終地点といえる大学院で、
巡り会った先生方から受け取ったいちばん大切な経験は、
ここ一番という時に、背中を押してもらったことだった。
知識は、ある程度以上、ひとりでも習得することが可能 である。
しかし、大きく舵を切る方向を指し示してもらうのは、
何にもまして貴重な経験なのだ。
昨年から、お世話になった恩師が病床に着き、質問したい ことがたまったままになってしまった。 そうして、今頃になり、ご一緒させていただいた時間が いかに貴重であったかに気づく鈍い己である。
その先生にも、どれだけ背中を押してもらったことだろう。
お元気である間、もっとお話したかった、もっとお礼を
言えば良かったと、後悔は尽きない。
だが、今は、岐路にある学生の背中を、私自身が押して
あげる時が来ているのだろう。
もうことばを交わせない師も、それを、いちばん喜んで
くれるのかもしれない。
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