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「能動的出来事」へ

「今年は、○○さんにとってどんな年でしたか?」

年内の授業も、今週で終わるので、最後に学習者の方たちに

質問をしてみた。


ある人は、こんな質問を受けること自体考えていなかったのか、

すこし戸惑いつつ、

「そうですね、良くも悪くもない年だったと思います」、

また、別な人は、

「年明けと共に転職をして、変化の多い年でした」、

という風に、自然な日本語で答えてくれた。


ウィズコロナで幕を開けた2020年は、やはりコロナを、

完全には克服できないまま暮れていく。


しかし、「ウィズ」状態の継続は、われわれに、単なる

諦念ではなく、そのなかで生き抜いていく知恵を授け、

鍛えてくれたようでもある。


学習者の方たちの答えは、表面的には、かなり控えめ

だったが、コロナ禍のなか、多くの人々が明暗を分けた

事態をかんがみれば、「明」の側に位置しているように

みなされる。


それは、運よくそうなったのでなく、たとえ安定した

境遇にあっても、さらにステップアップを望むという

意識の高さが、コロナ前とは違った状況にありながら、

この方たちをゆたかにしているようだ。


そのゆたかさは、物質的な潤沢さに限らず、精神的な

自己肯定感にあらわれており、生き生きと授業を受けて

いる姿からは、私自身、良いエネルギーをもらっている。


ニューノーマルは、以前のノーマルを取り戻すための

一次的な避難所でなく、別なありかたを積極的に見つけ

出す途次ともいえ、そこにはオルタナティブな希望が

託されてしかるべきだろう。


パンデミックにとどまらず、自然災害その他諸々の厄に

より、この先も、人間に試練が絶えることはない。

だが、世界の脆弱(ぜいじゃく)さから目を逸らすのでも、

無常観にとらわれるのでもなく、もともと壊れやすいもの

としてあった世界を、ぞんざいに扱わない戒めとなるの

なら、危機からこそ学ぶことは大いにある。


発生直後からの短くない時間、世界におけるコロナの猛威を、

われわれは、「受動的出来事(じゅどうてきできごと)」として

うけとめた。

一気な解決や劇的な方策はむずかしくとも、貴重な教訓を得て

のち、それを「能動的出来事(のうどうてきできごと)」に

転換する時期が、すでに来ているようだ。




今年『人新世(ひとしんせい)の「資本論」』 が、新書大賞を受賞し、一躍、時の人と なった斎藤幸平(さいとうこうへい)氏は、 若きマルクス主義経済学者。 大阪市立大学大学院で教えるかたわら、 メディア等を通じ、各方面で発信を続けている。 斎藤氏の監修した『ジェネレーション・レフト』 を、地元の図書館で借りようとしたら、予約が 10人入っていた・・・!

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