- 日本語空間
読書・読解・試験問題(2)
週明けから天気は荒れ模様。
ひとり事務所にいて、人気(ひとけ)のない街
に降りそそぐ雨を想像しています。
今日は、昨日に続き「国語」のなかの読解問題
について書こうと思います。
過去に学習サポートをおこなった留学生の話に
よると、博士課程の入学試験に、寺田寅彦
(てらだとらひこ)の文章が出題されたという
ことです。
→それを読み、日本語で論述をおこなう形式。
寺田寅彦(1878-1935)は、近代の物理学者です
が、芸術に造詣(ぞうけい)が深く、夏目漱石
との交友が知られています。
彼の随筆は、高い評価を得ていて、読解問題に
引用される「常連」でもあります。
このように「出題者好み」ともいうべき作家が、
確かに存在します。
時代とともに、その顔ぶれは変わってきています
が、昨今のキーワードに「学際性」が挙げられる
でしょう。
とはいえ、大学や大学院、何より専攻により出題
の内容は当然異なりますね。
そこで、試みに東京大学(文科)、京都大学(文系)
の最近の現代文の問題をチェックしました。
→直接は関係がなくとも、参考までに。
共通するのは、文理にまたがるような学際的内容と、
文学的内容の文章が、セットになった形式です。
東大では、中屋敷均(なかやしきひとし)と
是枝裕和(これえだひろかず)、京大では、
金森修(かなもりおさむ)と大岡信(おおおか
まこと)・谷川俊太郎(たにがわしゅんたろう)
の文章が、出題されていました。
→大岡・谷川は対談形式
中屋敷均は、農学博士で、話題を呼んだ著書
『ウィルスは生きている』は、先日紹介した
『生物と無生物のあいだ』の9年後に、同じ
講談社新書として出版されました。
是枝裕和は、『万引き家族』をはじめ国際的に
評価の高い映画監督。
出題された「ヌガー」は随筆です。
金森修は、哲学者ですが、医学や生物学に依拠
した考察を展開しています。
そして、大岡信と谷川俊太郎は、日本人なら
だれもが知っている詩人です。
昨日書いたように、外国人にとって、後者に
あたる文学的な読み物は、とっつきにくさが
あるかもしれません。
しかし、学際性を備えた前者には、専門的内容
をかみくだいて語りながら、知的好奇心をそそる
良書が多いです。
それゆえ、留学生の皆さんにとっても、教養を
身につけつつ、日本語表現を学べるテキストと
して適しているのではないでしょうか。
補足:東大(理科)の現代文は、中屋敷の問題
のみ。
京大(理系)の現代文は、金森修と吉田
秀和(1913-2012)がセットになって
いる。
吉田は、東京帝国大学仏文科出身の音楽
評論家。

雨が小降りになったので外の空気を吸いに。
丘から工業地帯を臨む。 18時半