- 日本語空間
豊穣なる読書
こなさなければならない課題があるのに、
どうしてもスイッチが入らない時は、思い
切って短い時間だけ、そこから離れてみる。
無理に集中しようとしても、目が文字を
追っているだけで、内容が頭に入ってこな
ければ、時間の浪費にすぎないから。
そのような時にこそ、読みたいと思いながら
ずっと後回しになっていた本を取り出す。
いくばくかの罪悪感? をどこかで覚え
つつも、難問に立ち向かう自分への早い
ご褒美のような気持ちで。
図書館へ行った時、貸し出し冊数に余裕が
あれば、あらかじめこのような事態を想定
し、愉しみのための本を借りる。
小休止は、短いから「小」がつくのだが、
それゆえに一層、凝縮された豊穣な時が
流れていく。

む 「書くとは、物の名を変えるというよりは むしろ、ことばにつもった埃を払いのけ、 世界を灰一色の単調さから救い出すことで ある。ことばに報いる者はこうして、見える ものにはその色を、見えないものにはその 浮彫りを取り戻す。それは驚異を分泌する」。 (本文より)