大学入試の指導をしていた学生の方が、日本近代の名創業者
に関心があるということで、関連するテキストを、何冊か
一緒に読んでいました。
「経営史」というと、どことなく無味乾燥な名称ながら、実際
そこには、多種多様な工夫と挫折、成功の軌跡がうかがえる
のです。
彼らは、ビジネスを行いはしましたが、単なる金儲けのため
の金儲けではなく、近代の風に乗り、自由闊達にみずから
を恃(たの)み邁進していったのだともいえます。
私が今いる街では、1859年に「開港」という事件が起こり
ました。
その噂を聞きつけ、以前は見捨てられたような場所であった
無名の当地に、全国から商機を当て込んだひとびとが、文字
通り蝟集(いしゅう)してきます。
写真は、「新聞売りの小政(こまさ)」こと安藤政次郎
(あんどうまさじろう)。
彼は、刺し子半纏に草履履き、日の丸の旗を2本立てた黒塗り
のはさみ箱を担いだスタイルで評判となりました。
安藤は、当地で新聞販売所を経営したのち、故郷の豊橋に帰り、
養豚業を起こします。
元来、動物好きであった彼は、種々の動物を飼育し、それは
「安藤動物園」に発展しました。
新聞売り時代のシュッとした出で立ちとは異なりながら、この
時代には、呼び込みのため、うさぎの着ぐるみを身につけ、
来園者を楽しませたといいます。
無論、挫折や苦難もあったでしょうが、自由闊達に生きた安藤
の軌跡からは、爽快な風が吹いてくるようです。
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