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雛(ひな)を流す

昨日はちょうど雛祭りだったので、外国人学習者
と話していて、その話題になった。
先週くらいから街を歩いていると、ショーウィンドー
などに雛壇(ひなだん)が飾ってあるのを何度も
目にしていた。
昔から残っている風習や祭りは、外国にも数多く
あると思われるが、西洋から入ってきたクリスマス
やヴァレンタインデー(起源からはだいぶ姿を変えた)
などと、ごく伝統的な日本の行事が共存している
のは、ユニークといえるのかもしれない。
動画の「流し雛」は、現在おこなわれている雛祭り
の原点らしいが、雛人形自体が宮廷の人間を再現した
もので、行事がおこなわれるのは、古都のあった
京都など関西方面が中心となっている。
関東や他の地域では、雛人形を飾るだけで、簡素な
型の雛を川に流すのを見かけたことはない。
そこには、人形を子どもの形代(かたしろ)として
川に流し、汚れをはらい、無病息災を願う意味が
込められている。
この時期には、雛あられというお菓子が売られ、
伝統的な風習を重んじている家庭では、ちらしずし
を作って食べたりする。
そして、子どものころから耳にしてきた雛祭り
の歌は、今も毎年街に流れている。
祭りと言いながら、その音楽はそこはかとなく
しめやかで、ちょうど桜の花のように、美しい
ながらも翳りを帯びているのである。