- 日本語空間
無為の為
9月に入ってから、やや過ごしやすい気候になった
こともあり、ここ港町では毎週末に何かしらの
イベントがおこなわれている。
今日も、隣り合わせた地区で、たくさんの屋台が
並び、仮設ステージでは演奏が続いていた。
私は、事務所からの帰り道にそこを通っただけで、
イベントに参加しようというつもりはなかったの
だけれど。
こんな風に、街の偶景を目にしながら、そこを
ただよぎるのも風情があるように思う。
どこかしら異邦人のような気分で・・・
勢い込んで何かをするのでなく、自然にまかせ、
偶然にまみえたシチュエーションを楽しむのも
よいのではないか。
中学くらいのとき、「網」には、布でできている
部分だけでなく、穴が空いている部分がなければ
用途は成さない、と教師から聞いた気がする。
つまり、その「何もない部分」も、何かある部分
に劣らず大切なものなのだと。
長い博士論文に向き合ううち、あくせくとした
加速主義的な行き方を、やんわり拒否したい心性
が生じたようだ。
それは、単なる怠けや、いわゆるマイペースと
いうようなものとも違う。
無為の為に、手ごたえを感じながら、束の間に
過ぎる時間を、押しとどめようとしているのかも
しれない。
