- 日本語空間
夏の音
コロナ発生以降、在宅期間が大幅に増えたこともあり、
身近な自然に親しむ機会が増えた。
こうしてブログを書いている間にも、ひっきりなしに
鳴く蝉の声が響いてくる。
旧事務所は、近隣に緑が生い茂っていたためか、
この辺りではめずらしいヒグラシ(蝉の一種)の
しめやかな鳴き声が聞こえた。
あたかも彼岸から響いてくるような、と書いたら
文学的過ぎるかもしれないが、日本人にはそのように
聞こえる音声も、外国人が聞いたら、また違った感想
になるのかもしれない。
昨晩は、授業が始まる30分前に、花火の打ちあがる音が
聞こえ、そういえば海の方で3年ぶりのお祭りが開かれて
いたな、と思い出していた。
花火は、本来、死者への鎮魂の意味を込め、盆のある
夏季におこなわれていたものだが、現在は、イベント色
が強まり、季節が問われなくなってきている。
事務所のある港町では、年間を通じ、イベントの数が
多く、道を歩いていると花火の音をよく耳にする。
打ち上げられる場所は、大抵、海の方なので、そちらに
頭を向けると、夜空に浮かび上がる花火が目に映る。
花火は、ふつう目で見て楽しむものと思われるが、打ち上げ
の際の景気のいい「ドン」という音は、暑気払いの効能も
併せ持つ。
それも、一種の風流だ。
昨晩も、授業の準備をしながら、快い打ち上げ音を耳にし、
しばしその手を止めて、闇夜を彩る大輪の華を思い描いた
のだった。
