学生には、自分自身で気づかない「原石」の輝きがある。
論文の執筆に際し、経験が浅いと、基本的に何を書けばよいのか?
また、何は書くべきではないのか? という判断が一人では難しい。
論文指導をおこなうとき、いきなり書き方を説明したりはせず、
ウォーミングアップを兼ね、まずはロジカルシンキングを試みる。
そうして「問い」と「答え」を繰り返すうち、眠っていた考えが
引き出され、疑問は解消され、自己肯定感も高まっていくのだ。
経験が浅いことは必ずしも欠点ではなく、むしろ思考に囲いがない分、
切り捨ても容易にはおこなわれないので、本人は気づかないながら、
価値あるアイディアを無意識に保持していたりする。
そんな「独創性」に出会う瞬間は、至上のよろこびで、指導のかいも
あるというもの――
胸に手を当て、己にとって何がさびしいかを問えば、それは学生時代
に戻れないこと、との答えが浮かぶ。
だが、換言すれば、そのような学生時代を送りえたのは、何にも増して
貴い経験だった。
そうであるからこそ、現役の学生の秘められた輝きを、一層輝かせたい
と願ってやまない。
2022.6.10
Comments