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ホモ・ファーベル(ものをつくる人)

図書館でのセレンディピティ的出会い!

自分自身の専門でなく、学習者用の参考文献を探していて、

良書にたどり着くことがある。


経営学専攻の方の研究テーマを練る過程で、目当ての本を借りた

後、貸し出し冊数に余裕があったため、ふと手に取ったのが

アドリアーノ・ティルゲルの『ホモ・ファーベル』だった。


ティルゲルは、彼自身よりは有名なイタリアの共産主義者・

アントニオ・グラムシが、獄中で綴ったノートで言及した人物

で、『全体主義の起源』を著したドイツの哲学者・ハンナ・

アーレントも、『ホモ・ファーベル』に注目していたという。


「ホモ・ファーベル」は、“ものをつくる人”の意味。

カタカナ語のジャーゴンも、目についたが、より興味を引かれた

のは、サブタイトルの「西欧文明における労働観の歴史」だった。


経営を学ぶためには、それ以前に存在する「労働」、ひいては

それをどう捉えるかという「労働観」と、その歴史を知ることが

必須だろう。


私自身、己以前にあった労働に対する人々の考えや、近年のそれ

に対する価値観の変化が、非常に気になっている。


同書は、各章が短くまとまっていることもあり、一気に半分ほど

読了した。

扱われる「労働観」は、ギリシャ・ローマ文明からはじまり、

キリスト教、ルネサンス、社会主義、ファシズムにおけるものまで

網羅している。


「ホモ・ファーベル」を、漢語に置き換えれば“工作人”となり、

「ホモ・サピエンス」つまり“知性人”とは、対照をなす。


1924年、当時最も注目される知識人となっていたティルゲルは、

ファシズム体制へなびいたりしなかったため、体制側の敵意を

浴び、司書を務めていたアレッサンドリア図書館で、辞職に

追い込まれた。


批評活動も沈黙を余儀なくされるなか、1929年、上梓されたのが、

『ホモ・ファーベル』であり、刊行と同時に同書は、国際的な

反響を呼んだという。


どの位置に立って見るか、で解釈も異なってくるだろうが、

今、あらたな危機の時代に、「ホモ・ファーベル」の意味を再考 したい。

“借景”は聞いたことがあるが、“樹格”ということばは知らず、勉強 になった。 自国の文化を、客観的に評価するのはむずかしく、かえって異文化 にひかれるというのは、ままあることだが、好きなことを仕事に できれば、それ以上の幸いはないだろう。

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