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冬の名残り/春のはしり

先日、授業中に「名残り(なごり)」ということば が出てきたとき、学習者の方が、「初めて聞く」ので 意味がわからない(漢字からも想像できない)と 言いました。


毎回ディクテーションをしているのですが、わからない ことばは、このように漢語よりも和語に集中している ようです。 単に客観的な事実を指す語ではなく、日本文化特有 のニュアンスをふくんだことばではあります。 それゆえ、1対1対応での説明が容易ではないため、 用例をたくさん挙げていくうちに、何となくわかって きたとのこと。 途中で、「文学的な表現ですか?」と質問されました。 勘がいいですね! 確かに、情緒的な余韻を持つことばとも言えます。 しかし、それでは、文学など一般的ではない場面に のみ用いられるのかというと、そうとも限らない。 「季節」が去りゆくとき、「人」と別れるとき、 それを惜しく思い、離れがたい気持ちを表しています。 そこから「名残り惜しい」と言ったりします。 「残念」とは、微妙にニュアンスが違うんですよね。 日本に限りませんが、四季の変化がはっきりしている 場所では、その「移ろい」を感じやすいとも言えましょう。 さて、今は、冬の名残りと春のはしりが交差する 季節。 関東では、すっかり春めいてきましたが、南北が縦に 長い日本において、北海道のような土地では、まだまだ 冬の名残りが感じられるのでは。 同地では、4月に「名残り雪(なごりゆき)」が降ること もあるそうです。 昨日、図書館の帰り、公園を通ったら一部の桜が、すでに 満開状態でした。 春のはしりというにしても、早すぎるのではないかと、 しばし暗闇に目をこらし… 季節の巡る早さが変われば、人間の感性も、それとは一体の 文化も、変わっていくのかもしれません。

パン屋のショーウィンドーに飾られた雛人形 2021.3.3

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