今日のニュースで、藤井総太(ふじいそうた)氏が、3連勝の成績で
「棋聖」を防衛したという記事が、トップを占めている。
それが、史上最年少の18歳であることも話題だ。
棋士には、天才肌(てんさいはだ)の人物が多いようだが、藤井氏に
至っては、その独自な思考法が注視される。
他の棋士が「盤面」を頭に思い浮かべながら、勝負を進めるのに対し、
何と藤井氏は、「符号」で形勢判断をしつつ、読みを進めていくという
のだ。
確かに、具象的な事物も、抽象化することで全体像の把握が早くなる。
常に、相手よりも先んじて盤面を読まねばならない棋士にとって、この
思考法は優位に立つというわけだ。
その特異さは、「光速」とも称される。
藤井氏は、今年の1月、卒業を目前にしながら、将棋に専念するため
高校中退を決意した。
しかし、こどものころから読書家であり、学生時代は、数学や地理が
得意だったそうだ。
読書という行為は、「世界」を読解するためのリファレンスを増やし、
抽象思考を鍛えるには、むしろ不可欠。
たとえば、基本は、文系に軸足を置いていても、理論系の本を多読すると、
抽象思考が鍛えられ、理系的な発想に近づいていくのは、己の経験からも
いえることだ。
それによる顕著な成果は、専門外の分野に接しても、拒絶反応が起こらず、
全体像のおおまかな把握が可能なこと。
また、分野を問わず、良質な読書を積み重ねていくと、クリエイティブな
発想が掘り起こされる。
藤井氏も、わずか9歳で創作した詰将棋で、谷川浩司名人の名を冠した賞を
獲得している。
1秒間に6,000万手の局面を読み込み、あらゆる選択肢の中から最善の一つ
を選び出すAIの及ばない、その上をいく「X」を、追い求めてやまない
彼の姿勢からは、当分、目が離せないようだ。