日本語空間

2021年2月27日

あたらしい流れ――社会人大学院生という選択肢――

コロナの収束(「終息」ではありませんが)が、感じられ
 
るようになり、今年度における入試の最終結果も、そろそろ
 
出揃うためか、ここにきて依頼が増えています。
 

 
なかでも、社会人の方からの問い合わせが続いていて、私自身、
 
少々驚いています。
 

 
以下、参考までに例を。
 

 
◆Aさん
 
大学卒業後、自国で働いてきたが、今春から日本の会社で働く
 
ことが決まっている。
 
英語を使用するので、日本語学習は、まだ始めていない。
 
仕事での専門に関係する日本の大学院へ進学し、博士課程まで
 
修了できればと思う。
 
会社に了解を取りつけて、働きながら学びたい。
 
最終的には、大学で教鞭を取ることが希望。
 

 
◆Bさん
 
現在、日本の会社で、日本語と英語を使用し勤務している。
 
専門性が高く、海外とのやりとりも半分を占めるため、
 
日本語能力はN2。
 
仕事に支障がない範囲で、専門とは別に、日本の大学院で
 
MBAを取得したい。
 
最終的には、会社を経営することを希望している。
 

 
◆Cさん
 
大学卒業後、自国で働いてきたが、スキルアップのため、
 
日本の国立大学院で研究生として1年を過ごした。
 
今春、めでたく試験に合格し、同大学院の修士課程へ進学
 
が決まった。
 
一応N1は取得しているが、研究生の授業でも、理解でき
 
ない点が多々あったため、アカデミックジャパニーズを
 
強化したい。
 
大学は、卒業論文でなく卒業制作であったため、論述経験
 
がとぼしく、日本語での修士論文の執筆にも不安がある。
 

 
ちなみに、AさんとBさんは理系。Cさんは文系(芸術系)です。
 

 
以前は、1年でも早く卒業して就職し、安定した生活を送るの
 
がよい、という考えが主流でした。
 
しかし、一般の価値観が多様化するにつれ、単に「大学名」や
 
「若さ」ではなく、中身、特に「経験値」が重要視される
 
ようになりました。
 

 
つい先日、政治家の発言中、「わきまえる」ということばが、
 
ただしく批判されたのは、その証左でしょう。
 
→こう「あるべき」の強制に対する「No!」
 

 
18歳で大学に入学、22歳で卒業後、すぐに就職し、安定した
 
人生をずっと送るのも、本人が納得しているなら、もちろん
 
良いことです。
 
しかし、「横並び」しか許されなかった生き方が、国を問わず
 
再考され、人々が柔軟な生き方を模索していることを、今、
 
つよく感じます。
 

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