日本語空間

2020年10月9日

アカデミズムはどこへ行く

現在、ノーベルウィークの真っ只中で、各部門において

誰が賞を獲得するかが、熱い話題となっています。

日本は、これまで物理学9名、化学8名、生理学・医学5名、

文学2名、平和部門1名がノーベル賞を受賞。

しかし、近年、科学技術立国を支える大学院の博士課程

の学生が減少しており、過去の受賞者が、この事態に警鐘

を鳴らしています。

ひとつの道を究めるには、じっくり腰を据えて学問と

取り組まねばならないにもかかわらず、その間どのような

生活手段に頼るのか、いかに良好な環境を整えるのかが、

至難の業になっているのです。

さらに、学位取得後も、それに見合う仕事に就けるか

どうか覚束(おぼつか)ない状況で、高度な研究に踏み出す

のは勇気の要ること――。

一方、新政権の発足後、総理大臣が「日本学術会議」の

次期会員中6名を任命拒否し、大きなニュースとなりま

した。

それに対する説明責任も果たされず、当該の機関への

予算等が、今後「聖域なしに」見直されるとのことです。

各界の論客が、この件についてさまざまな意見を述べて

おり、問題は多岐にわたるものの、日本社会のなかに

巣食う“反知性主義”を認めざるをえないのは、遺憾です。

社会科学と人文科学にまたがる領域に軸足を据え、研究

を続ける身としては、いまさらながら、文理を横断し、

アカデミズムの牙城に閉じこもらず、世俗とも渡り合う

強靭な「知」が希求されねばならない、と再認識する

次第です。

   今週の[東大生協本郷書籍部]

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