- 日本語空間
儚(はかな)い
事務所の猫の顔をじっと見つめていると、猫の方からも
負けずに? 見返してくる。
保護したばかりのころは、野生がまだ強く、警戒心からか
必ず目を逸らされていたのだが…
最近は、ふとそんな猫の表情が、人間そっくりで驚くこと
がある。
だが、猫の顔が変化したのか? 私自身の意識が変化して
そう見えるのか? 正確に把握することはかなわない。
満開だった桜の花は、大方散ってしまった。
日本人が、この花を愛でるのは、咲いている花の姿以上に
花が「散る」ときの風情なのだろう。
つまり、にんべんに夢と書いて「儚い」ということだ。
連想的に「愛惜/哀惜」ということばが思い浮かぶ。
昔、「かなしい」は、「愛しい」とも書いたらしい。
悠久の歴史にくらべれば、人ひとりの一生など桜の花の
命よりも儚いのに、それを互いに散らし合うことなど、
一体いつまで続けるのだろう――
今日は、師に電話して、寄稿の締め切りを1日延期して
いただけないかとお願いした。
字数オーバーで、どうしても削れ切れずに奮闘していた
が、他のページに空きが出たので字数を増やしていい
という許可を得て、ホッとした。
猫は今、クッションの上で丸くなり、熟睡している。 ちいさな営みも、一つ一つ疎かにせず、悔いなく生きたい と願う。
