寒の戻りなのか、少し前は春そのもののような陽気だったのに、
ここのところ肌寒い日が続いている。
それでも猫に換毛期が来ているのは、確実に春が訪れている証
なのだろう。
人間は、目に見える事物に左右されやすいが、環境におのずと
反応する動物に教えられることは少なくない。
学習者の方が住むマンションのベランダに鳩が巣を作ったと
聞いたのは、1か月ほど前だった。
都会の鳩らしく、人慣れしていて、目が合ったらじっと見返して
きたそうだ。
おそらく親鳩は、場所の安全を吟味していたのだろう。
そうして、数ある中からその場所が選ばれたというわけだ。
つい先日、雛が孵った、感動したという写真入りの報告が届いた。
大学院で、長い間研究を続けていると、書きあぐねてスランプに
陥ったり、わけのわからない精神不安にさいなまれたりすることは
珍しくない。
才能があり、意気込みもつよいからこそ背負い込んでいた辛苦を、
自然の使者が救ったようだ。
人間を蘇生させるのは、人間とは限らない。
一雨ごとに春めいていく季節に、さまざまな思いが去来している。