top of page
  • 日本語空間

『青春並不温柔―Who'll stop the rain?ー』


先日、授業の中で話した「芸術の秋」にちなんで

ではないが、東京国際映画祭で気になった映画が

あったので、一昨日思い切って足を運んだ。


会場は有楽町。

午後8時過ぎの上映開始にもかかわらず、客席は

ほぼ埋まっていた。

年齢層は、若者から中高年まで。

台湾映画ということで、外国人留学生らしい集団

も見かけた。


映画の舞台は1994年。

大学の美術学科で、表現の自由を認めず管理的な

教育をおこなう教師たちに、大学生たちは団結し

ストライキをおこなう。

しかし「自由」は、それ自体決定的なかたちを

取るものでなく、各人の理想も異なり、集団行動

の足並みは乱れていく。


最初に字幕で説明があった通り、1987年に戒厳令

が解かれた台湾では、1990年代に入っても自由を

求め自分探しをする学生たちの熱気が充満して

いたようだ。

監督によれば、8割がフィクションで、2割が実話

に基づくという。


日本の学生運動は、1970年代で収束したが、

「革命」を語りながら、前線で闘うのは男子学生で、

女子学生は彼らの身の回りの世話をする役目だった

と聞いたことがある。


時代はもっと下るものの、映画の中ではそれに比し

女子学生が自立し、男子学生と同等にふるまって

いたのは、みずからの手で民主主義を勝ち取った

台湾ならではの「不羈」といえるのだろう。


学生たちは、結局、大学側に敗北するのだが、

「運動」は、だから無駄だったとはいえまい。

屈従も永遠には続かず、抵抗の潮は、また満ちる

だろう。


原題『青春並不温柔』は、「青春は優しくない」の

意味だそうで、なるほどと思わされた。

英語のタイトル『 Who'll stop the rain?』は、反対に

抒情的だが、それもそれで合っている気がした。

ただし日本語の『青春の反抗』だけは興ざめで、

受け入れられずに残念(外国映画の邦題に関して

は想像力のなさがしばしば指摘されてきたが...)。


現在の台湾映画のポテンシャルが感じられる作品だ。

チン役の俳優の研ぎ澄まされた演技は圧倒的で、

随所に盛り込まれた繊細なカットも、理想的であり

ながら非力な彼らを慈しみ、描いているようで印象

に刻まれた。






閲覧数:42回0件のコメント
bottom of page