日本語空間11月27日2 分都市と建築秋になるといつも思い出す詩がある。 あわれな 僕の魂よ おそい秋の午後には 行くがいい 建築と建築とが さびしい影を曳いている 人どおりのすくない 裏道を (立原道造『晩秋』) 最初の2行は、詩としては格別な趣があるわけでは ない抒情的な表現だ。...
日本語空間11月13日2 分揺れ続けることば先週まで、秋にしては異常に気温が高いということが ニュースになっていたが、今週の後半に入り、やっと 20度を下回る日が訪れた。 ウォーキングをよくする身としては、むしろこのくらい の気温は歓迎だが、事務所の猫は活動が鈍り、やたら膝 に乗ってこようとする。...
日本語空間11月6日2 分「自由」のありか今週、東京国際映画祭が幕を閉じた。 毎年、注目をしてきたわけではないが、今年は1作を映画館 で鑑賞する機会を得、その後は動画でインタビューやワーク ショップ等も見た。 印象的だったのは、コンペティション的な色合いより、 国際的な交流の側面が強く感じられたことだ。...
日本語空間10月27日2 分『青春並不温柔―Who'll stop the rain?ー』先日、授業の中で話した「芸術の秋」にちなんで ではないが、東京国際映画祭で気になった映画が あったので、一昨日思い切って足を運んだ。 会場は有楽町。 午後8時過ぎの上映開始にもかかわらず、客席は ほぼ埋まっていた。 年齢層は、若者から中高年まで。...
日本語空間9月30日2 分分別力と創造力気がつけば9月も今日で終わり。 2、3日前まで聞こえていた蝉の声もパタリと止んだ。 ノーベル賞発表の時期が迫るこの季節、日本人では4人目 のノーベル賞受賞者である尾崎玲於奈(おざきれおな) 氏のインタビューを興味深く読んだ。...
日本語空間9月18日1 分100年9月というのに、新潟県では37度の気温を記録し、 各地で熱中症のアラートが発動されている日本は、 三連休の真只中。 今日は敬老の日で、国内では100歳を超える 人が9万人を突破したというニュースを見た。 まさに人生100年時代の実感が迫る。...
日本語空間8月7日2 分共振前回のブログで、自身は飲めもしない酒の比喩を 用いたが、「美酒」といえば連想するのは、 漢文で習った「涼州詞」だ。 実際に、戦争(この時代は「いくさ」と呼んだ 方がぴったりする)は悲惨なものだが、極限状態 に臨んだとき、ある者は動揺もしなくなり、...
日本語空間7月24日2 分「蛙化(かえるか)」という現象今年は、去年よりも暑い夏となり、地方では40度近い 気温のところもあるようだ。 環境に配慮すれば、クーラーを使いすぎない方がよい とわかっていても、適宜使わなければ体調を崩して しまう。 事務所の猫も夏バテ気味で、日中は食欲がないよう...
日本語空間7月9日1 分原風景とホスピタリティコロナがようやく収束し、外国人観光客が一気に戻ってきているが、 一般的な「観光」ではない異文化を体験しようとする人々もいる。 その一つが、四国の霊場を巡る「お遍路(おへんろ)」の体験だ。 国籍、年齢、性別を問わず、さまざまな人が訪れているようだが、...
日本語空間7月8日1 分ルビコン川を渡る?今では当然のように受容されているシステムの中にも、 登場当時は、賛否両論を生んだものがあった。 最初は警戒心を抱いたとしても、利便性が優先される うち、それなしではいられなくなる。 ChatGPTが注目を集めるこの日頃、東京大学の副学長...
日本語空間6月25日2 分「TKG」悠久の歴史を遡れば、強大な帝国の周縁から 出発した名もない列島であった日本は、 文明の器である漢字を、自分たち流に作り 変え、ひらがな、カタカナを生み出していった。 そうして、元々あった漢字を排除せず、 三つのことばを並存させながら、日本語 を使い続けてきたのである。...
日本語空間6月4日1 分開化へ一昨日荒れ狂っていた天気は、昨日には何事もなかった かのように晴れ渡った。 毎年この季節におこなわれる開港祭は、梅雨のはじまり に当たるため、せっかくの打ち上げ花火も残念ながら 中止になることが多い。 今年も例にもれず、そうなってしまったが、歴史的な事実...
日本語空間5月25日2 分断捨離(だんしゃり)「断捨離(だんしゃり)」ということばがある。 最初に提唱されたのは1970年代で、コロナ感染拡大の時期、 再び注目されるようになったらしい。 入ってくる不要な品を断つ「断」、家にあるガラクタを 捨てる「捨」、ものへの執着から離れる「離」。...
日本語空間4月13日1 分知的ダイナミズムあればこそ創造的な営みには「よろこび」が伴う。 私自身が学術論文と向き合うのも、単に文章を書く のでなく、そこにあたらしい世界を出現させるべく、 創造的な取り組みをおこないうるからである。 まるで哲学の問答めくが、己が、知的ダイナミズム を招き寄せているのか? 己以前、歴史的に堆積...
日本語空間3月25日2 分人と「被(かぶ)らない」ということ人間の行動様式は、人間という種ならではの性質に基づく と言えるが、それ自体、仮のノルム(規範)であり、絶対 不変のものではない。 極言すれば「移ろう」ものなのであるから、その意味では、 型にとらわれすぎるべきではないだろう。...
日本語空間3月2日2 分坂道の途中でコロナ(covid-19)は、基本的に災禍以外の何もの でもないと思われているが、それがもたらした 「恩恵」もあるのではないか、と、発生直後から 3年余りを経た現在、感じられることがある。 そのひとつは、多くの人が首肯しうるだろう 以前の生活の見直しだ。...
日本語空間1月19日2 分口頭試問に臨む口頭試問のシーズンである。 数年前から、働く外国人の大学院進学が増えてきたが、 入試に際しては、筆記試験と面接、もしくは学習計画書 提出と面接のいずれかの形式で受験をおこなう。 筆記試験がないとラクそうだが、実際は、学習計画書...
日本語空間2022年12月18日1 分秘境(ひきょう)が招く生まれた時から住んでいる国は、慣れていてめずらしく ないせいか、いつか行けるだろうという気持ちがある からか、意外にあちこち出かけていない。 かえって外国人の方が、短期滞在であっても(あるから こそ?)日本の各地を旅行しているようで、そんな...
日本語空間2022年11月25日2 分ことばの多義性あることばが、文脈により異なる意味になるのは、 どの国の言語にもありえることだろう。 最近、興味深く感じたのは、「カルチャー」という ことばの用い方だ。 ここでの場合、頭高でなく平板型で発音される。 カルチャーは、直訳すれば文化だが、組み合わされる...
日本語空間2022年9月28日2 分世相(せそう)昨日、図書館へ行き本を読んでいると、図書館員 が早足で通路を行ったり来たりしていた。 返却された本を書棚に戻したり、本を整理したり するのは、普段からめずらしくないことだが、 あまりに頻繁過ぎて妙な雰囲気なのである。 来館者を見てないようで見ていることもあり、...